2008年5月17日土曜日

Mellotron 忘れられない音

Mellotron はイギリスのMellotron社で60年代に開発されたエレクトリック・キーボードである。

鍵盤ひとつひとつに太いアナログの磁気テープがあり、鍵盤を押すと巨大なモーターが回り、テープを巻き込む7秒間のみ音が出る仕組みです。もちろん、そのテープが巻き戻る間は音が出ない。

ひとつのコードを押さえてもシンセサイザーのように永遠に音は続かない故にコードの押さえるポジションを変えざるえない必然性が出てくる。

ここがMellotronを使った音楽の面白いところで、よく聴くと、押さえているコードのポジションがどんどん変わる、もしくはカウンター・メロディーを弾かなくてはいけなくなる。これは音楽を平坦にしなくてよい要因である。

ついついナマなキーボーディストは楽にコードを押し続けるきらいがあるが、このMellotronはそうはいかない。頭を使って自分で弾くことをアレンジする必要がある。

Progressive Rock =Mellotronなんて傾向もあるが、そうでもない。機能上、早く弾くこともできない。そうすると、キーボーディストでないプレイヤーに適した楽器かもしれない。テクニックよりもアイディアが優先されるからだ。

本体の中には、大きなテープを収納するカートリッジがあり、テープさえ代えればどんな音だって再現可能である。今でいうサンプラーの原始的なものと言って良いかもしれない。純正のテープにはストリングス、フルート、コーラスがあり、後になって管楽器やサウンド・エフェクトのテープも発売されました。

Mellotronはスタンダードな形のものとMkⅡという直列二面鍵盤のものがあった。ビートルズの中期の作品でジョン・レノンが弾いていたものがこれである。

80年代に入り、デジタル機器やサンプラーの出現で、Mellotron社はつぶれた。

しかし、誰でも知っているMellotronのストリングスとフルートの音には、音楽の個性をも変えてしまうような魔力がある。アナログ・テープに録音したときの音の劣化による中域だけの音像、ヒスノイズやキーごとに微妙に違うピッチなどいろいろなファクターが原因だが、あの白い箱の中に魔法使いが住んでいることを信じてやまない。

LINK
http://www.mellotron.com/ Welcom to Mellotron

http://www.vemia.co.uk/mellotron/

2008年5月16日金曜日

Soft Machine / Bundles Allan Holdworth が参加!


Soft Machine こそは、カンタベリー・シーンを代表するミュージシャン人脈及び彼らの共有する音楽文化風土の主な幹にあたるグループである。
もとはと言えば、ホッパーやラトラッジがワイアットの家に集まって、オーネットやコルトレーンのレコードを聴いたり、即興セッションを繰り返していたのが始まりだった。
前作「Seven」あたりから、当時流行りのクロス・オーバーの影響か、シンセサイザーを導入、サウンドの電気化が顕著になってきた。
そして、デビュー以来空席であったギタリストのポジションにあの Allan Holdworth が参加してこの「Bundles」は制作された。
バンドにとっては思い切ったサウンドのイメージ・チェンジを図っている。それはジャズ・ロックからジャズ・フュージョンへの変貌であった。 Allan Holdworth のテクニカルなギター・プレイはバンドの表現の幅を思いっきり広げ、より多くのファンの獲得につながった。全編 Allan のギターがメインに展開され Allan のファンは秘聴!
しかし、従来のSoft Machine の路線からは大きく離脱、唯一のオリジナル・メンバーだった Mike Ratledge も本作をもって脱退。その後はSoft Machine の名は残しながら Karl Jenkins のグループと化し完全なジャズ・フュージョンのグループとなって行くのだが
それはそれで、なかなか良くて私は好んで聴いています。

2008年5月15日木曜日

Robert Wyatt / Rock Bottom 不死鳥の復活


Robert Wyatt の初ソロ・アルバムは不慮の事故により下半身不随となりドラマーの道を絶たれた後の作品です。
この水墨画がのような淡い海を描いたジャケットそのものの1曲目「Sea Song」すごくリリシズムを感じさせられる歌だ。Wyattのまるで嗚咽にも似た声が何故か心を締め付けさせられる。この1曲だけでも、このアルバムは聴く価値があると思います。
Robert Wyatt はカンタベリー・シーンにおいて中心的バンドSoft Machine のドラマーからスタート、次第にジャズ志向を強めるバンドから脱退、その後、自身のグループ Matching Mole を結成。良質な作品を発表するが解散、そして不慮の事故、今回のこの作品がヴォーカリスト、Robert Wyatt としてのスタートとなったのである。
彼を信頼するカンタベリー系のミュージシャンたちに支えられ、(Mike Oldfield Fred Frith 等が参加)Pink Floyd の Nick Mason がプロデュース。
独特な雰囲気を持つ、本当に印象に残る傑作アルバムになった作品です。

2008年5月14日水曜日

AZIA 栄光よ再び!


AZIA についてはコアなプログレ・ファンからは、いろいろと良くない評価がされてきた。
今、この記事を書いている最中だが、それこそ再結成された AZIA がこの日本で来日コンサートを行っている最中でもある。
John Wetton/ Steve Howe / Carl Palmer/ Geoflrey Downes と言った、YES .King Crimson.EL&PというProgressive Rock シーンのトップ・バンドに在籍した泣く子も黙るようなメンバーで結成された AZIA は70年後半から急速に衰退していった Progressive Rock の復興を狙った切り札的バンドだったとも言えます。ゆえに商業的ロックに接近して言ったのも戦略的な要素だったのだろう。
メンバーが在籍していたそれぞれのバンド特有の大作は一切無く、全ての曲がポップかつスリムに4、5分にまとめられ、卓越したテクニックとアレンジに裏打ちされた楽曲はそれまでのプログレの概念を打ち破った。全曲シングル・カットできそうな曲だが、よく聴けば確実にそれぞれのメンバーのプレイヤーとしての特性が生かされている。特にこの時期の John Wetton のヴォーカルは存在感がある。
このアルバムは全米でも大ヒットし、9週間連続NO.1を記録、その年のアメリカで最も売れたアルバムとなり、日本を含む世界的な大ヒットとなった。

2008年5月13日火曜日

Chris Squire / Fish Out Of Water もっともYESな男!


Chris Squire の初にして唯一のソロ・アルバム。
Chris Squire こそ YES を支え続けた男、あれだけ激しくメンバー・チェンジをしながらも YES が長い間、活動し続けたのも Chis Squire が尽力を尽くしたからこそ、なにせ Jon Anderson が脱退しても YES を守り続けた、それがこの
Chris Squire なのである。
このソロ作も、本当に YES らしくて、YES ファンならば間違いなく気に入る内容となっている。高音域な Chris のヴォーカルもなかなかだし、いかにもといった バリバリのベース・プレイにも痺れます。
私のお気に入りは4曲目の「Lucky Seven」です。すでにこの時 YES を脱退していた Bill  Bruford のタイトなドラムと Chis Squire のベースそれに絡む ご存知 Mel Collins のサックスが鳥肌ものです。
その他いかにもプログレと言った長尺な組曲も、聞き込めばそれなりに良いです。どちらにしても YES ファンなら手元に置いときたい1枚です。 

2008年5月12日月曜日

Patrick Moraz / I 驚異のラテン・プログレ


Patrick Moraz 初のソロ・アルバム。
YES が「リレイヤー」発表以降、暗礁に乗り上げ格メンバーがソロ・アルバムを企画していくなか、YES 在籍中にリリースしたが、結局この作品が高い評価を得たことで YES の脱退が早まったのは、なんとも皮肉な現実となってしまった。
Patrick Moraz は70年代の他のキーボード・プレイヤーによくある形式美などが全くない。ピアノといい、シンセサイザーといいアプローチがジャズとクラッシックの絶妙な変態的なフレーズ感、壷にハマッテしまうと病みつきになってしまう。ありきたりさは全然感じられない。
Patrik Moraz スイス出身で、クラッシクを勉強、コロンビア大学で音楽を学び、プログレとラテン・ミュージックに傾倒したバックボーンもユニークだ。ブラジルのパーッカッション・グループを起用して、レイ・ゴメス ジェフ・バーリン アルフォンソ・ムーザン アンディー・ニューマーク と言った優れたミュージシャンを起用、ラテン・プログレという新たなジャンルを確立した偉業は多いに評価すべきだ。
この後、本作も含めブラジル3部作を制作、次回もなかなか良い、日本のギタリスト 渡辺香津美のアルバムでもギターとシンセの強烈バトルを繰り広げている。

2008年5月11日日曜日

GRYPHON / Red Queen Gryphon Three


GRYPHON は、英国王立音楽院で古典楽器を学んでいた、二人の学生が中世音楽とロックの融合を目指して結成された。
プログレでは、よく中世音楽を素材として用いたケースは数多いが、彼らのようにオリジナルの作曲によって、さらに探求を深めた例はあまりない。このようなアルバム、もしくは GRYPHON のようなグループが存在したことがプログレの奥深さを感じずにいられない。
この当時 YES のツアーの前座を務めていたこともあり、それに誘発されたのか、このアルバムでは、キーボード・サウンドがより全面的に出て、かつ全曲インストルメンタルのみの長尺な4曲で構成されている。
キーボード類の大幅な導入に加えて、テープ・エフェクトすら用いながら、めくるめくる音彩のきらめくタピストリー、リーダー格の Ricard Havey は、後にリコーダーのソロ・アルバムを製作するほどの腕達者であり、同じく王立音楽院の出身の Brian Gulland はバスーンや古楽器の優雅な音色を鮮やかに操って、特徴あるサウンドを作り出している。
しかし、中世音楽に特有の体位法的な展開や装飾的フレーズを可能にしているのは、グループ全体の卓越したアンサンブル能力にほかならない。実によく練り上げられた作曲、構成と相まって、物憂いまどろみからリズミックな疾走へ、それすら跳躍のための助走に過ぎなかったのかと思い知らされる。

2008年5月5日月曜日

CAMEL は日本人好み? Moonmadness / CAMEL



CAMEL は意外と、この日本においてファンが多い。


実は私もそうで、CAMEL のアルバムは今でも頻繁に聴いている。いい意味でホっとするのかな?

か細いヴォーカルと、哀愁の泣きギターが日本人の琴線に触れるのだろうか。


この76年の「Moonmadness」は CAMEL  の最高傑作と評する人も多く、CAMEL らしさがよくでた作品です。


ジャケット同様にサウンドもファンタジックで美しいメロディーの曲で構成され、非常に聴き易い、ラストの「Lunar Sea」はCAMEL 流フュージョン的なインストでライヴでの定番にもなっている。今は亡き Peter Bardens の温かみのあるオルガン、ムーグ・ソロや Andy Latimer のギターが上手くバランス取れているのも、このアルバムの良いところです。


決して、テクニカルな演奏や身を削るような緊張感がプログレの音ではない、CAMEL のような癒し系もプログレの醍醐味なんですよね。

2008年5月4日日曜日

GONG のShamal なかなか良いですよ。



GONG の最高傑作とされる前作「YOU」の後、バンドのリーダだった Daevid Allen をはじめ、主だったメンバーも GONG を去って行ってしまった。

その後この GONG を引き継いだのが打楽器奏者の Pierre Moerlen である。
演奏も打楽器中心の非常に躍動感に溢れるサウンドとなっており、所々GONG 特有のサイケの雰囲気も少し残しながら、ジャズ・ロックというより当時75年流行りのクロス・オーバー的なサウンドともいえ、次回作「Gazeuse!」ではパーカッションを3人にするなど、さらにというか強烈なインストルメンタルな音楽を追求して行くことになってくるのだ。

この「Shamal」はちょうど、前期の傑作「YOU」と後期の傑作「Gazeuse!」に挟まれたつなぎぎてきなアルバムで、ちょっと存在が忘れ去られたイメージがある。
しかし、どっちつかずな雰囲気も捨てがたい魅力に包まれている。タイトでかつ躍動するリズムの上をさらにヴィヴラフォンをはじめ打楽器がリードをとり、サックスが絡んでくる曲展開は程よい緊張感も相まって気持ちよい。いい意味でこの当時75年の音だなーと思います。


2008年5月3日土曜日

炎 Wish You Were Here / Pink Floyd


Wish You Were Here (あなたがここにいてほしい)
なんてよわよわしいタイトルなのだろうか、前作「狂気」の記録的大ヒットは、次回作に対する絶大な期待と裏をかえせば各メンバーへの強烈なプレシャーをもたらしただろう。
Wish You Were Here とは、若くして精神障害を引き起こしバンドを去った Syd Barrett へのオマージュ。
ここには、前作のような文明批判や狂気だのといった重々しいテーマ、コンセプトなどはなく、ある意味とても地味で 喪失感 といったものに覆われているようだ。発表当時はあまりよい評価を受けなかったように記憶しているが、David Gilmour の弾くブルージーなギター・ソロは名演である。一度聴いたならば耳から離れない「泣き系プログレ」の傑作だと思う。

2008年5月2日金曜日

David Gilmour


David Gilmour の78年の初ソロ・アルバム。
シンプルにただ David Gilmour となずけられたタイトルは、ほぼ等身大の David Gilmour の音楽がある。壮大なプログレ的な展開を期待すると、肩透かしを食らうが、シンプルながら
David Gilmour の個性が100%でているアルバムである。
78年と言えば、Pink Floyd が問題作「アニマル」を発表した後で、独裁制を強めはじめた、リーダーの Roger Waters に対して強まるバンド内の不満が、Richard Wright とこの David Gilmour のソロ・アルバムの製作の動機となる。
そしてギターの David Gilmour が最初にソロ・アルバムをリリースする。バンド参加以前の仲間と製作したこのアルバムはギター・サウンド全開な作品であった。ブルージィーでソリッドなギターで歌いあげたこの作品は、後の Pink Floyd 復活アルバムにも通じる内容となっており、ギタリストとしての才能を開花させている。

2008年5月1日木曜日

北欧のプログレの雄 Inget Nytt Under Solen / KAIPA


KAIPA はスウェーデンのプログレ・バンドである。
プログレはイギリスだけじゃなく、世界中のあちらこちらに存在したと言うことが、以外と最近知られてきた。
この KAIPA も、もしもリアルタイムに日本で紹介されていれば、もっともっと知名度は上がっていたと思う。何故かというと哀愁のあるメロディーが、たぶん日本人の涙腺を誘う、魅惑的なものだから、あの CAMEL にも通じる部分もあるし、情報さえあれば自分もいまさら、あわてて聴くこともなかったと思います。
いまさらの如く、プログレの世界は奥が深い、まだまだ知らないバンドが世界中にいっぱいあるので一生かけても網羅することはできないかも知れないです。
独特のトーンの泣きのギターに各種キーボードが絶妙に絡み、哀愁のあるメロディーの連続は、厳しい北の紀行の中でうまれた温かみや優しさも感じられる、澄み切った北の青空に響き渡るようなヴォーカルも魅力的です。
最近、再結成され2枚の好作をリリースしました、そちらも良いです。