2008年4月20日日曜日

ピラミッドに見せられた、孤独な男 PYRAMIDI/ The Aran Parsons Project


まるで映画のワン・シーンを観ている様なジャケット。
ホテルの狭い部屋で一人苦悩する男、その部屋の窓には、暗闇に映しだされるピラミッドの巨大な姿。これだけで、いろいろミステリー的な物語を想像していまう。
ピラミッドがどれほど神秘的なものか、その前に立ち、登り、その中を探索した者でなければわからないだろう。そびえ立つ壮大な神殿。その頂点は宇宙に向かい、その頂点を支えるために積まれた数知れぬ大きな石。
夜ともなれば、さえぎるものが何もない広大な砂漠に青白い影を落とす。それは全くの死の世界なのだけども、その中でピラミッドは静かに息をするのだ。
明暗、生と死、この世に生きる人々と神々との会話、 Alan Parsons の製作した、このアルバムはそんなふうに聴く者にイマジネーションの世界へと導いてくれる。
1曲目の静寂を破るサウンド、風の音、誕生、旅立ち、ゆったりとした情感に包まれ、やがて加わる「生」の鼓動にも似た規則正しいリズム。そのリズムに乗って歌が始まり、2曲目になる。ギター・サウンドから次第にオーケストラが加わり、ブラス・サウンドも重なり、雄大なコントラストが見事だ。やはり途切れず3曲目「鷲の飛翔」へ、スローでマイナーな曲たんたんとしているが、美しい旋律をもったバラードで、ヴォーカルのバックに入るモノフォニックなキーボードの音がなんとも言えない哀感を漂わせている。そしてラスト・ナンバーの「孤独な男の影」はそれこそジャケットの絵そのもの、ピアノにオーケストラ仕立てのサウンドを加えての美しいスロー・ナンバー。その曲想は流麗で、高音のヴォーカルが独特の哀感を持つ。とはいうものの、単にバラードとしての味だけではなく、ある種の説得力をもって私たちの胸を打つのだった。

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